どうも、教え方コンサルタント、話し方コーチのK太郎(@kimuniunchi)です!
日々のクレーム対応がつらくて悩んでいませんか?
クレーマーからしつこく責められたり、名指しで批判されたりすると落ち込んでしまいますよね。その気持ち、本当によくわかります。
僕は10年以上、コールセンター業界におり、業務の性質上、特に多くのクレーム対応を経験してきました。
そこで、この記事ではつらいクレームをどのように乗り切ればいいのか、僕の経験からいくつかお伝えしたいと思います。
なぜクレームはつらいのか
「クレームが嫌い」という人は多くいますが、「クレームが好き」という人はなかなかいません。どうしてでしょうか。
クレーム対応をしている時の自分をちょっと思い出して欲しいのですが、心拍数が早くなったり、手が冷たくなったり、口が渇いたりしますよね。
この反応は恐怖心からくる緊張です。つまりクレームがつらい理由は「クレーム=恐怖」と考えているからに他なりません。
当然、恐怖は楽しいものではありません。つらく苦しいものです。
ということは反対にクレームが恐怖でなくなれば、緊張することもなくなり、「つらい」と感じることもなくなるのではないでしょうか。
いやいや、簡単に言いますけど、クレームは恐怖でしかないですよ。どうやったって楽しくなんて思えないです。
確かにそうだね。僕もクレームを「楽しい」と感じることはないよ。でも、「恐怖」をコントロールすることは意外と簡単にできるんだ。
そこで、まずは恐怖というネガティブな要因を取り除くために、恐怖の正体について説明しようと思います。
クレームがつらいと感じる恐怖の正体
そもそもどうして人は恐怖を感じ緊張するのでしょうか。
結果からいうと、恐怖とは人間の防衛本能です。
恐怖を感じている時、緊張している時に自分の体にどのような変化が起こっているもう一度思い出してみてください。
・声が小さくなる
・体が硬直する
・息が荒くなる
例えば、目の前に熊が現れたとしましょう。
すぐにでも逃げ出したい気持ちですが、大きな声を出したり走りまわったりすれば、襲い掛かってくるであろうことは何となくわかると思います。
つまり……。
- 相手が襲い掛かってこないように威嚇し(=顔がこわばる)
- 刺激を与えないようにして(=声が小さくなる)
- 襲い掛かって来られてもなるべく傷つかないように(=体が硬直する)
- 冷静な判断ができるよう脳に酸素を送って(=息が荒くなる)
いるのです。これが恐怖心(から来る緊張)の正体です。
クレームを言うお客さまも熊と同じで、自分を脅かす存在だからこそ防衛本能が働き、恐怖を感じるのです。
これは自分の身を守るために本能的に行っている行動なので、制御するのはなかなか難しいといえます。
えぇ!? 全然解決になってないじゃないですか! もうダメだ!
早まるなって。もうちょっと話に付き合ってくれ。
すでに恐怖から発生した防衛本能を制御することは難しいですが、そもそも防衛本能を働かせないようにすることができれば恐怖を取り除けるのではないでしょうか。
自分事にするからクレームはつらい
恐怖から防衛本能が働くのは、恐怖の対象を「自分事(じぶんごと)」にしている時だけです。熊に襲われそうになっているのが、自分だから怖いし緊張します。
もし熊に襲われそうになっているのが赤の他人で、しかもテレビの中の出来事だったらどうでしょうか。さきほどのような緊張や恐怖は感じないですよね。
実はここに緊張や恐怖を感じないようにするポイントがあります。
それが、自分に起こっている出来事を「他人事(ひとごと)」に置き換えてしまうという方法です。
クレームを他人事と置き換えてみる
あなたがお客さまからクレームを言われた時、無意識に「自分が攻撃対象になっている。」と考えているはずです。つまりそのクレームは自分事であり、緊張や恐怖の対象になっています。
これを「自分ではない誰か」が言われているという風に考えます。
もう一人の自分や、想像上の人物でも何でも構いませんから、自分とクレーマーとの間に「自分ではない誰か」が居るとイメージして、その人がクレームを言われている、と考えます。
実際僕がクレーム対応で暴言を浴びせられている時は「このお客は、僕が今手にもっているボールペンに向かって怒っているのだ。」と考えるようにしていました。
声を荒げ、顔を真っ赤にして、一生懸命ボールペンにクレームを言っている相手の姿を想像すると何だか笑えて来ない?
うむむ、確かに。
このように、クレームを言われているのが「自分」でなければ、緊張や恐怖を感じる必要はありません。クレーマーの言葉も客観的に、傍観しているような気分で聞くことができます。
クレームを自分事から他人事に置き換える練習
この方法はとても簡単な割に大変効果がある方法です。
後で知ったことですが、NLP(神経言語プログラミング)という心理学でも同じような方法があるそうです。
ところで「自分ではない誰か」をその場でイメージするというのは、最初はちょっと難しいですよね。
そのため、次のような方法であらかじめ練習をしておくことをオススメします。
2) 思い出した映像の中の自分とクレーマーとの間に、「自分ではない誰か」を登場させる。
3) クレーマーの攻撃対象が「自分ではない誰か」に置き換わるサインを決めて、そのサインを実際に出す。
4) サインをきっかけに、思い浮かべた映像の中の自分を「自分ではない誰か」に置き替える。
サインというのは、さきほどの僕の場合、「ボールペンを取り出してカチッと1回ノックさせる」というようなものです。
このきっかけが「自分事」を「他人事」に置き換えるスイッチの役割を果たします。
クレームとは何かを考える
ここまでの方法はクレーム自体をどうこうする、というより恐怖を取り除き、クレームがつらいと感じないように自分自身をコントロールするものでした。
ここからは、クレームとはそもそも何なのか。クレームについて正しい知識をもって、武器や防具を用意しておくことで、心に余裕をもって対応できる方法をお伝えしたいと思います。
不満があるからクレームになる
クレームはお客さまの不満から生じるものです。
そして不満とはお客さまが期待していることと、その期待より低い現実とのギャップ(差)です。
例えば、お洒落なレストランを予約して入店した際、「いらっしゃいませ!」と温かく出迎えてもらえることを想像しますよね。
もしこれが「っしゃーせー」とまるでコンビニの店員のような態度だったらどうでしょうか。なんかイメージと違うな、とちょっと不満を感じますよね。
反対に今述べた「コンビニ」に入店したのであれば、「っしゃーせー」と言われてもあまり不満に感じることはないと思います。
つまり、そのサービスや商品が、お客さまが考える”あるべき姿”に達していないと不満を感じることになります。
そして、不満を感じたことを外部に表明することがクレームです。
ちなみにさきほどの例は一般的なものですから、レストランの出迎えを「不満に感じない」という人もいれば、逆にコンビニの「っしゃーせー」すら許せない、という人もいるでしょう。
そこはお客さまが理想と考えるあるべき姿の基準をどこに置いているのか違うので一概には言えませんが、いずれにしても不満がない限りクレームというのは発生しないことがわかります。
※不満が存在しないクレームは悪質クレーム(不当クレーム)として分類しています。詳しくは以下の記事をご覧ください。
https://atama.co.jp/entry/claim-teigi/
クレームの声ではなく不満の気持ちに耳を傾ける
不満がもとでクレームが発生するわけですが、実はクレームを言うお客さまは、自分の不満を上手く伝えることができません。
なぜなら不満を伝える前に、感情というフィルターがかかってしまい、自分自身でも何をどうすればいいのかわかっていないからです。
「ふざけるな」「バカ野郎」などの暴言、「社長を出せ!」「今すぐに謝りに来い!」などの理不尽と思える要求は、すべて感情に身を任せたものに過ぎません。
https://atama.co.jp/entry/shacho-dase/
クレーム対応の時に大事なことはそうした感情任せの声、言葉をうのみにしないことです。
表明された”クレーム(=要求)”に反応するのではなく、その原因となった不満の気持ちに耳を傾けるよう努力します。
お客さまが感じた不満は何か、そしてその不満に耳を傾け理解しようとすれば「ああいうクレームを言うのも無理ないな」とか「この不満に対してあのクレームは飛躍しすぎだ」などと冷静に、客観的に判断できるようになります。
https://atama.co.jp/entry/okyakusama-yorisou/
表面上のクレームだけを捉えてしまうと、どうしてもその言葉が持つ攻撃力に圧倒されて「つらい」と感じてしまいます。
しかし、そもそもの不満の気持ちに寄り添うことができれば、少なからず共感できる部分も出てきて、つらさを和らげることができるのです。
クレーム対応の基本を知っておく
ここからはクレーム対応の基本中の基本と言われていることで、クレーム対応の書籍やブログなど、どこにでも載っているものです。
しかし、クレーム対応の基礎知識がないために「なんで自分がこんな目に……」とクレームでつらい思いをしてしまう人もいます。
もし、あなたがクレーム対応に関する研修や上司からのアドバイスを受けたことがないのであれば、次のことだけでもいいので今からやってみてください。
とにかく聞くことに徹する
クレームを言うプロセスとして、その根底に不満があるから、と説明しました。
「こんなことに不満を感じた!」「この不満を解消してほしい!」こうした思いからお客さまはクレームを言います。
そして前述のようにお客さま自分自身は不満をうまく口に出して伝えることができません。お客さま自身が不満や要求を整理して、正しく伝えられるようになるのは話しの終盤になってからです。
そのため、お客さまがクレームを言っている最中で割り込んで話し始めたり、解決策があるからといって早々にそれを提案したりしてはいけません。
確かにクレームを言っている時に話を遮られたら余計にイラっとしますよね。
たとえお客さまが求めている答えだったとしても、クレームをしている手前、意地になって収集つかなくなっちゃうこともあるんだ。
もちろんクレームは怒りという感情がのっていることもあり、できれば聞きたくないものです。しかし、たとえ良い提案であってもお客さま自身が真の不満に気づけていない以上、会話を切り上げようとすることは逆効果です。
そのため、どのような形であればまずはお客さまの不満を最後まで吐き出させる、ひたすら聞くことに徹します。
話を最後まで聞くことに徹すれば段々とお客さまもクールダウンしていき、真の不満が何なのか、どうすることがお客さまにとって一番の解決策になるのか見えるようになります。
言いたいことが言い終われば、お客さまもあなたの言葉に耳を傾けてくれるようになります。そこから提案をする、とかお断りする、という段階に移行すればいいのです。
他にもあるクレーム対応の基本
僕のブログではクレーム対応の初心者向けノウハウをいくつか記事にしています。
ここではクレーム対応が得意でない人にオススメの記事をいくつか紹介したいと思います。
https://atama.co.jp/entry/claim-ittehaikenai/
クレーム対応において、絶対に言ってはいけないNGワードを紹介しています。「そんな言い方したら良くないに決まっている。」とわかっていても、つい感情的になって言ってしまうこともあるので注意が必要です。
https://atama.co.jp/entry/claim-oshietekurenai/
コールセンターなどの接客業では最初に対応したスタッフと、その後に対応したスタッフが違うことでお客さまが何度も同じ説明をしなければならない、ということが起こり得ます。そうした時の対応方法について書いています。
https://atama.co.jp/entry/claim-shitsukoi/
しつこいなあ、と思うクレーマーと対応する際に読んでおいてほしい記事です。こうしたクレーマーはしつこいと感じる前に自分自身の行動を振り返ることであっさりと解決できることもあります。事例付きで紹介しています。
https://atama.co.jp/entry/personal-attack/
クレームにはサービスや商品を対象とするものと、対応しているスタッフ個人を攻撃対象としたものがあります。個人を対象にしたクレームはよほどの落ち度がない限り許されるものではなく不当クレームに分類されます。そうした個人攻撃を受けた際の対応方法を紹介しています。
つらい気持ちを溜め込まない
トレーニングをしたり、方法論で武装したりすることで、「つらい」クレームも「つらくない」クレームに変えることができます。
しかし、それでもすべてのクレームを「つらくない」ものにするのは難しいです。僕も多くのクレームを経験していますが、100%つらくないかと問われればそんなことはありません。
「つらい」「もう無理」と思った時は、溜め込まず、気持ちを解消させることを考えましょう。
自分だけのリラックス方法を見つける
つらいクレーム対応をした後に、気持ちを切り替えるリラックス方法をあらかじめ用意しておくといいです。
温かいコーヒーを飲む、深呼吸する、トイレでこっそり泣く、人に迷惑がかからないことであれば何でも構いません。自分なりの切り替えスイッチのようなものを用意しておきましょう。
ちなみに僕は次に接するお客さまとの挨拶を切り替えスイッチにしていました。どんなにつらいクレームでも、きっと次のお客さまは僕に元気をくれるはず!
こんな風に考えて「お電話ありがとうございます!」とあえて明るく挨拶するようにすると、さきほどまでのつらい気持ちが消えることが多かったです。
人に話す、愚痴る
コールセンターだと「業務の話を部外者に話しちゃダメ」などと言われます。もちろん、業務の内容やお客さまの情報を外部に漏らすようなことはいけません。
でも、つらい、苦しい、という気持ちをそのままにしておくのも良くないです。気持ちを溜め込むと、どんどん病んでしまいます。
そこで、僕はクレーム対応でつらい、と感じた時は同僚や先輩に「ちょっと聞いてくださいよー。」と愚痴るようにしていました。
とくに同じような業務をしている先輩なら「わかるわかる!」と同調してくれるのでいくらか気持ちが楽になるものです。
ちなみに上司に愚痴るのはオススメできません。
上司というのはあなたを監督指導する立場にありますから、よほどの信頼関係が築けていない限り「それは君が間違っているよ。」など諭されてしまい、余計にストレスが溜まることになります(笑)。
この記事をみているのが”上司”の立場の人は、オペレーターさんの「つらい」という気持ちに寄り添ってあげてね。正論なんか言う必要ないから。
まとめ
クレームはつらく苦しいものですが、少し考え方を変えたり方法を知っていたりするだけで、だいぶ気持ちを和らげることができます。
かつての僕もクレーム対応で悩んでいました。うまく対応ができず、つらい思い、悲しい思いをたくさんしてきました。
そんな僕だからこそ、同じように悩んでいる人のため今後もこうしてクレーム対応やコミュニケーションに関する情報を発信していきたいと思っています。
僕の伝えていることが少しでもあなたのクレーム対応のつらさを軽減できることを心より祈っています。