敬語の中でも相手の動作を敬う意味で、「お」や「ご」をつけることがある。反対に自分がする動作に「お」や「ご」はつけない。では「ご説明いたします。」という言葉は正しい敬語なのでだろうか。
おさらい
その前に敬語についてのおさらいをしておこう。敬語にはざっくりと3つの種類がある。
- 尊敬語
- 謙譲語
- 丁寧語
まず尊敬語とは相手のことや相手の動作、相手に近い人を敬って(高めて)使うものである。例えば「Aさんが見る」であれば「Aさんがご覧になる」と「見る」の部分を尊敬表現にする。
謙譲語は自分のことや、自分の動作、自分に近い人をへりくだって(低める)使うものである。「私が見る」であれば「私が拝見する」というように表現する。
丁寧語は言葉自体を丁寧に言うこと。上記の例だと「Aさんがご覧になります」や「私が拝見します」などの「~ます」がそうだ。他にも「花」を「お花」と言ったり、「着物」を「お着物」と言ったりする美化語も丁寧語の一部である。
詳細を知りたい方は次の記事も参照してもらいたい。
https://atama.co.jp/entry/keigo/
ちなみに丁寧語=敬語と勘違いする人がいるが、敬語は相手を敬って相手を立てるか、自分を下げるかが必要になるので「です」「ます」だけでは敬語で話しているとは言えない。
「お」や「ご」を付けると尊敬語になる
実は尊敬語の中にもいろいろな形がある。一般的な形をあげてみよう。
「〜になる」の例
- お客さまがお帰りになります
- 新作はご覧になりましたか
「〜なさる」の例
- どちらをご利用なさいますか
- お気になさらないでください
他にも「〜(れる)られる」や、「〜くださる」の形、「召し上がる」などの言い換えの形がある。
そしていずれの尊敬語も言葉の頭に「お」や「ご」が付くことが多いということに気づかないだろうか。
- 「お帰りになります」
- 「ご覧になりますか」
- 「ご利用なさいますか」
- 「お気になさらないでください」
尊敬語を使うときは「お(ご)〜になる」、「お(ご)〜なさる」のように頭に「お」か「ご」をつければ、なんとなく尊敬語っぽくなる、ということがわかる。
「ご説明いたします」は自分を高めることになる?
頭に「お」や「ご」を付けることで尊敬表現になることはわかった。
ではこんな場合はどうだろう。
- 「私がご説明いたします」
- 「そのようにお伝えいたします」
「説明」も「伝える」も自分の動作を敬語にしているから、謙譲表現を使っていることになる。しかし、頭には尊敬表現で使う「お」や「ご」が付いている。これは自分や自分の動作を敬っている(高める)ということになってしまわないだろうか。
実はこれらの「お」や「ご」は使う相手によって変わる。
上記の例の場合、その話題に出てくる人物が自分に近い人間なのか、相手に近い人間なのかにより、「お」や「ご」を付ける判断をすればいい。
話題の対象(人物)が相手、または相手に近い場合
話題の対象がお客さま
「はい。私がご説明いたします」
話題の対象が社長の家族
「そのようにお伝えいたします」
話題の対象がお客さまや社長の家族であった場合、それは相手自身や相手に近い人物ということになる。この場合、「お」や「ご」をつけて問題ない。
話題の対象(人物)が自分、または自分に近い場合
話題の対象が自分の部下
「はい。私が説明いたします」
話題の対象が自分の家族
「そのように伝えます」
自分の部下も自分の家族も自分に近い人物なので、この場合「お」や「ご」はつけない。
このようにその言葉を使う相手が自分から近いか、遠いかで「お」や「ご」を付けるか判断する。
まとめ
尊敬語、謙譲語の違いがわかっても、使うシーンによって迷うことが多々あると思う。
今回とりあげた「お」や「ご」もそのひとつ。謙譲語は自分を低めなければいけない!と決めつけてしまうと、その考えにがんじがらめになってしまう。
誤った敬語を使うことは極力避けたいが、相手を敬う気持ちがあれば、間違いながらでも少しずつ使えるようになれば良いと思う。