「説明が分かりにくい」と後輩に言われた、何度教えても新人が同じところで間違える、自分では丁寧に教えているつもりなのに相手の反応がうすい、など、教え方に頭を悩ませていないでしょうか。
結論から言うと、教え方が下手と言われる原因は、教える側が相手の目線に立って教えられていないことです。自分の頭の中にある目的や判断の基準を言葉にしないまま、手順だけを相手に渡しているのです。
この記事では、仕事ができる人ほど教え方が下手と言われる理由と、教え方が下手な人がついやってしまう10の行動、その言い換え例をご紹介します。あわせて、教え方が下手な上司や先輩に困っている教わる側の方に向けて、分からないところを聞き出す方法もお伝えします。
仕事ができる人ほど、教え方が下手と言われてしまう理由
仕事ができる人が、そのまま教えるのも上手いとは限りません。なぜなら、経験が長い人ほど、仕事の手順や判断の一部を無意識に行っているからです。「ここは見れば分かる」「このくらいは普通にやる」と感じているところほど、新人には見えていません。
たとえば、先輩が新人に「会議の資料、印刷しておいて」と頼んだとします。先輩の頭の中には、何部必要か、両面か片面か、ホチキスをどこで留めるか、何時までに会議室に並べるかがすべて入っています。しかし、口から出たのは「印刷しておいて」の一言だけです。新人は言われたとおりに印刷しますが、部数も留め方も違うものができあがり、先輩は「なんでこうなるの?」と思ってしまいます。

つまり、教え方が下手と言われる人は、自分に見えているものが相手にも見えていると思い込んで話しています。株式会社あたまでは、このように人によって見ているものや見えている広さが違うことを「目線ズレ」と呼んでいます。目線ズレには、視点(見ているもの)・視野(見えている広さ)・視座(見ている高さ)・視角(見ている角度)の4つがあり、教える場面で特に起きやすいのは、持っている情報の広さが違う「視野」のズレです。

教えるのが下手な人は「頭が悪い」と言われることもありますが、原因は頭の良さとは別のところにあります。むしろ、できる人ほど、自分がどうやってできるようになったかを忘れています。そのため、教える前に、自分が無意識にやっている判断を、相手が使える言葉にできるかを確かめる必要があるのです。
教え方が下手な人がついやってしまう10の行動
ここからは、教え方が下手な人がついやってしまう行動を10個紹介します。ひとつずつ見ていきましょう。
1. 話が聞き取りにくい
話すスピードが速い、活舌が悪い、声が小さい……など、話が聞き取りにくいと教え方が下手に感じます。
教わる側は初めて聞く用語も多いので、普段話しているスピードであったとしても、聞き取りにくいということがあります。せっかく教えているのに、相手に聞き取ってもらえなければ、意味がありません。
教える時は、普段より少しゆっくりとしたペースで、ハッキリと相手に伝わるように話しましょう。
2. 曖昧な表現が多い
教え方が下手な人は断定的に物事を伝えてくれません。「多分、それで大丈夫」とか「その手順でいいと思う」と曖昧な表現をします。
教わる側は初めて知ることが多く、教わったことが正しいのかそうでないのか判断することができません。そのため、曖昧な表現をしてしまうと、相手を不安にさせてしまいます。
そもそも教える側に自信がない、という場合もありますが、曖昧な表現を口癖のように使っている人も多いです。
「~と思う」「おそらく」「多分」「~のはず」といった言葉を使っていないか、今一度確認してみましょう。
3. 部分だけを教える
教えるのが下手な人は全体像から説明せず、部分だけを教えようとします。
例えば、会社にかかってくる電話には自分で回答する、上司に転送する、折り返しにする、という3つのやり方があるとします。部分だけを教える人は、3つのやり方がある、とは教えず、「電話が来たら折り返して」のように教えます。
あらかじめ全体像(=3つのやり方)があることを説明しておけば、自分で考えて選択することができますが、部分だけしか教わってない人はたとえ自分で回答できる電話も折り返しにしてしまいます。
教える時は、細かい作業や手順から教えるのではなく、まずは全体像を俯瞰(ふかん)させた上で、部分を教えるようにしましょう。
https://atama.co.jp/entry/howtoteach-work/
4. 目的を教えてくれない
何のために必要なのか、どうしてやるのか、といった目的を教えてくれないのも教え方が下手な人の特徴です。
小さい頃、何のためにやるのかわからない教科や授業はなかったでしょうか。私は、日常生活で使わない計算式や古文を勉強する目的がわからず、学ぶことがとても辛かったという思い出があります。
「実は、この計算式は〇〇という時に役立つ」のようにあらかじめ目的を教えてくれれば、勉強にも身が入るのですが、目的がわからなければ、ただの退屈な作業です。
教えるのであれば、何のためにそれをやるのか、といった目的を示してあげるようにしましょう。
5. わかっている前提で話し始める
自分がわかっていることでも相手がわかっているとは限りません。教え方が下手な人は、相手がわかっている、知っているという前提で話を進めようとします。
誰であってもモノゴトについて知らない、わからない時期があるのに、不思議なもので人はわかった時からそのことを忘れていってしまいます。「初心忘るべからず」ということわざがありますが、教え方が下手な人は、初心を忘れがちです。
まずは「わからないことが当然」という気持ちで教えるようにしましょう。
6. 話があちらこちらに飛ぶ
教え方が下手な人は、話の筋が通っておらず、あちらこちらに話が飛びます。
Aの話をしていたのに、途中でBやCのことも気になって「ちなみにBの場合は」とか「イレギュラーだけどCになることもあって」と、話がどんどん横道にそれていってしまいます。
教わっている側としては、「Aの話をしていたのに、なんでBやCの話?」と思います。そもそもAの話も理解できていないのに、他の情報が入ると混乱してしまうのです。
いろいろなことをいっぺんに詰め込もうとせず、あらかじめテーマをひとつに絞った上で、そのことだけをまずは教えるようにしてみましょう。
https://atama.co.jp/entry/talk-preparation/
7. 言っていることがコロコロ変わる
昨日言っていたことと今日言っていることが違う、という人がいます。これも教え方が下手な人の特徴です。
悪気があるわけではなく「昨日教えたことがちょっと違っていたから、改めて正しいことを教えよう」ということが多いのですが、その時に何の説明もしないと「言っていることが毎回変わる!」と思われてしまいます。
話に一貫性がないことは、教わる側を混乱させるだけでなく、教える人の信頼も失ってしまいます。
一度教えたことを改めて伝える時は「訂正があります」とか「補足で伝えたいことがあります」のように、自分に非があることを認めたり、なぜ前回と違うのかをきちんと説明したりするようにしましょう。
8. わからない人の気持ちを理解しない
教え方が下手な人は、相手がわからないという気持ちを理解しません。「どうしてこんなこともできないの?」「簡単なことでしょ?」と平気で言い放ちます。
これは、自分自身が優秀でハイパフォーマーだった人に多いのが特徴です。自分は何でも要領よくテキパキこなせてしまうので、わからない人、できない人の気持ちがわからないのです。
しかし、世の中は優秀な人ばかりではありません。むしろ、普通の人や優秀でない人の方が多くいます。そういう人たちの気持ちに寄り添って、教えてあげなければ、独りよがりの教育に終わってしまうことでしょう。
9. 「そんなの常識」と言う
何か聞かれる度に「そんなの常識でしょ」と言う人がいます。これも教え方が下手な人がよく使うことばです。
本来、教える立場にある人は、教えることについて熟知しているはずです。どんな質問に対しても根拠や理由を述べられなければいけません。
それなのに「常識でしょ」と一蹴してしまうのは、自分の知識不足、説明力の無さをさらけ出すようなものです。また、そもそも一般常識と呼ばれるものでさえ、相手の育ってきた環境や文化によって違います。
人に教える立場である以上、相手の足りないと思うところを補うのが教える人の仕事です。どんなに些細なことであっても、常識という言葉で誤魔化さず、丁寧に教えることを心がけましょう。
10. 一方的に伝える
教えるのが下手な人は、相手がどれくらい理解しているかなどを確認せず、一方的に伝えようとします。
伝えるべきことはきちんと伝えた。だからあとは勝手にやってください。これでは、本当に人に教えたことにはなりません。一方的に伝えるだけなら、紙にでも書いてよこしてくれた方がよっぽどマシです。
教えるというのは、教えたことを相手がきちんとできるようになることをいいます。相手がどこまで理解しているか、教えたことができるようになったか、確かめながら進めていく必要があります。
新人のOJTを任されて、教え方を一から組み立てたい方は「OJT研修の進め方|トレーナーが使う5つの手順と会話例」もご覧ください。始める前に決めておくことと、トレーナーの言い方の例をご紹介しています。
職場で教え方がそろわず、新人が同じところでつまずいている場合は、教育係(OJT担当者)研修でもお手伝いしています。業務内容をうかがったうえで、目的と完成形から教える手順や、理解を確かめる質問を、実際の仕事を題材に練習します。詳しくは教育係(OJT担当者)研修のご案内をご覧ください。
下手な教え方を、伝わる教え方に変える言い換え例
そこで、教え方が下手な人がよく使う言い方を、伝わる言い方に変えた例をご紹介します。どれも、相手の頭の中にない情報を言葉にして渡しているところが共通しています。
「印刷しておいて」→目的と完成形を先に伝える
悪い例:「この資料、印刷しておいて」
良い例:「15時から役員会議があるので、この資料を10部、両面で印刷して、左上をホチキスで留めて、14時半までに会議室の席に並べておいてください」
最初に何のための仕事で、どうなれば完成かを伝えると、相手は手順の意味が分かります。教える側も、頼む前に部数や留め方などの条件を整理することになるため、伝え漏れが減ります。
「分からないことある?」→相手に説明してもらう
悪い例:「ここまでで分からないことある?」
良い例:「今の手順を、一度自分の言葉で説明してみてください」「もしお客様が別の日を希望したら、どうしますか」
「分からないことある?」と聞かれても、何が分かっていないのかが本人にも分からないため、「大丈夫です」としか答えられません。また、「分かりません」と言うと怒られそうだと感じて、分かったふりをする人もいます。本人に説明してもらったり、条件を少し変えた質問に答えてもらったりすると、どこまで理解していて、どこからが曖昧なのかがハッキリ見えます。
「そんなの常識でしょ」→相手が知っている範囲を確かめる
悪い例:「そんなの常識でしょ」
良い例:「この言葉は、どのくらいご存じですか。初めてなら、最初から説明しますね」
「社会人なら知っているはず」「2年目なら分かるはず」という基準は、教える側のモノサシです。相手が知っているところは短くし、知らないところに時間を使えば、同じ時間でも伝わる量が変わります。
「何かあったら聞いて」→相談する条件を決めておく
悪い例:「何かあったら、いつでも聞いてね」
良い例:「お客様から値引きの相談があったときと、作業が30分以上止まったときは、その場で私に声をかけてください。私が席にいないときは、課長に聞いてください」
「いつでも聞いて」と言われても、新人は「この程度で聞いていいのか」と迷い、聞けないまま自分で判断してしまいます。どんなときに、誰に、どう相談するかを具体的に決めておけば、新人は迷わず相談できます。
なお、教えるのが上手い人が実際にやっていることは「教えるのが上手い人の特徴7つ|優しく伝わる仕事の教え方と会話例」で、会話例と一緒に詳しく解説しています。
教え方が下手な上司・先輩にイライラしたときの聞き方
一方で、この記事を読んでいる方の中には、教え方が下手な上司や先輩に困っている方もいると思います。説明が足りないまま仕事を任され、あとからやり直しを指示されれば、イライラするのは当然です。しかし、相手の教え方が変わるのを待っていても、仕事は進みません。そこで、教わる側から必要な情報を聞き出す方法をご紹介します。
最後まで聞いてから、目的と完成形を質問する
説明の途中で自分なりに解釈して動き出すと、ズレたまま仕事が進みます。まずは最後まで聞いてメモを取り、そのあとで足りない情報を質問します。
「これは何に使う資料ですか」「いつまでに、どの状態になっていればいいですか」
この2つを聞くだけで、相手の頭の中にあった目的と完成形を引き出せます。
分かったところと分からないところを分けて聞く
「全部分かりません」と聞くと、相手も最初から説明し直すしかなく、お互いに時間がかかります。そこで、分かったところを先に伝えてから、分からないところだけを質問します。
「ここまでは理解していますが、この点だけ確認させてください」
こう聞かれると、教える側も、自分の説明のどこが抜けていたのかに気づけます。
最後に復唱して、ズレがないかを確かめる
説明を受けたら、仕事の内容・期限・優先順位・報告の方法を、自分の言葉で言い直します。
「では、A社の見積書を金曜の15時までに作って、できたら課長にメールで送る、ということでよろしいですか」
全文を繰り返す必要はありません。間違えると困るところだけを言い直せば、相手も自分の説明に抜けがなかったかを確かめられます。
ちなみに、上司の指示が分かりにくいと感じるときは、上司と自分で見ている高さが違うこともあります。指示の受け方とズレの防ぎ方は「仕事の認識のズレが起きる原因と防ぎ方」で解説しています。
まとめ
教え方が下手と言われる原因は、自分の頭の中にある目的や判断の基準を、言葉にしないまま教えていることです。要点は次の3つです。
- 仕事ができる人ほど、自分が無意識にやっている判断が相手に見えていないことを忘れやすい
- 教えるときは、目的と完成形を先に伝え、相手に説明してもらって理解を確かめる
- 教わる側は、目的と完成形を質問し、最後に復唱してズレを防ぐ
明日、誰かに仕事を頼むときは、「何のために」と「どうなれば完成か」を最初の一文に入れてみてください。それだけで、相手から返ってくる仕事が変わります。
さいごに

このブログを書いている僕は、完全オーダーメイド式の話し方教室を運営しています
もしあなたが教え方に苦手意識を持っていたり、反対に教え方の下手な人のせいで困っているのならぜひ一度、僕に相談してみませんか?
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職場の教え方を研修で見直したい方へ
職場の教え方を、会社として見直したい場合は、研修でもお手伝いしています。管理職研修「考え方×伝え方」では、部下への指示や面談で、考えを整理してから伝える方法を練習します。新人フォローアップ研修では、報連相や、事実と解釈を分けた課題の整理を行います。どちらも業務内容をうかがってから内容を組み立てます。詳しくは講演・研修・コンサルティングのご依頼をご覧ください。
新人や後輩を教える先輩・教育係の方に向けて、教育係(OJT担当者)研修も行っています。研修の内容と料金をまとめた資料(PDF・5ページ)は、研修・講演のご案内の資料ダウンロードからお受け取りいただけます。社内でのご検討にお使いください。

