どうも、教え方と伝え方のスーパーバイザー、きむにぃ(@kimuniunchi)です!
あなたは「自分だけは大丈夫」「今回は大丈夫」などと思って失敗した経験ありませんか?
このように物事を自分の都合の良いように解釈することを心理学の用語で”正常性バイアス”といいます。
この記事では、正常性バイアスが及ぼす悪影響とその対策について紹介しています。
正常性バイアスの機能
「今から1分後にUFOが襲来します」
こう言われたらあなたは信じますか? 多分信じないですよね。UFOなんて来るはずがない、1分後というのがいかにも嘘くさい。このように考えるのが自然だと思います。
人間は、予期しないことが起こった時「そんなことはありえない」「起こるはずない」「何かの間違いだ」と自動的に考える心のクセがあります。
これは、そのように考えて心の安定を保とうとする防衛本能です。空を見るたび「UFOが襲ってくるかも!」と不安になっていたら大変ですから(笑)。
つまり正常性バイアスとは、心が過剰に反応して疲れてしまわないように、人間の認知をある程度鈍らせてくれる機能ということができます。そういうことなら、別に悪影響のあるモノではないんじゃないの? と思うかもしれません。
しかし、正常性バイアスが強くなることで周囲に迷惑をかけたり危険な目にあったりしてしまうことがあります。
僕が出会った正常性バイアスの強い人たち
そもそもこんな需要のなさそうな記事(笑)を書こうと思ったのが、つい最近「これって正常性バイアスだよなあ」と他人に対して思うところがあったからです。
そんな僕が出会った正常性バイアスの強い人たちと、その悪影響について2例、紹介します。
保育園のルールを守らない
僕は今、次男を保育園に送り迎えするために自転車を使っています。保育園は住宅街の中にあるのですが、保育園に行くためには住宅街にある数メートルの一本道を通らなければなりません。
そして、この一本道を通る時は、”自転車に乗らず、押して歩く”というルールが定められています。
このルールは道路交通法などで決まっているわけではありません。保育園と地域住民とで話し合ったいわゆる”努力義務”のルールです。
どうしてそういうルールになったかというと、その一本道は狭い割に人通りが多く危険だからです。
この話は保育園の入園説明会ですべての保護者に説明されました。また、保育園からもらう手紙にも書いてあります。
しかし、ルールを守っているのは一部の人だけ。何人かの保護者は、送迎のいずれも自転車に乗ってピューッと走って行ってしまいます。
ルールを守らない人は「ちょっとだけなら大丈夫」「自分だけなら大丈夫」という気持ちがあるのでしょう。まさしく正常性バイアスが強く働いているわけです。
「時間がない」「急いでいる」その気持ちはわかります。
けれど、そうしたルールが守られなければ、保育園そのものが地域住民の非難の的になります。保育園にクレームが入るのも時間の問題かもしれません。
その結果、自転車登園そのものが禁止される可能性だってありますし、最悪の場合、保育園に行政指導が入るなんてことも考えられます。
ルールを守っている保護者からすればたまったもんじゃありません。
手順通りに仕事しない
これは、僕が管理者として働いていた時のこと。僕がいた職場にはデータの入力業務を専門とするチームがありました。
当然ですが入力ミスは許されません。そのため、作業は手順化され、マニュアルも用意されていました。
ある時、ミスが頻発するようになります。調べた結果、Aという社員がした作業で何度もミスが発生していることがわかりました。さらにAは手順通りに仕事をしていないこともわかりました。
どうして手順通りにやらないのか確認すると「手順通りじゃなくてもこれまでミスをしなかったから」という返答でした。
Aは手順があることは知っていたものの、手順を守ることがミス抑制につながることをわかっていないようでした。
こんな理由でミスが続けば、発注先のお客さまは当然怒ります。
ビジネスでは信頼が第一です。正常性バイアスが強く働いているその社員のせいで、業務ひとつが吹っ飛ぶことだって十分に考えられるのです。
さて、ここまでは正常性バイアスが強いことで周囲に迷惑をかけるという悪影響についてお話しました。ここからは、正常性バイアスが働くことによってその本人が危険な目にあってしまう、という事例を紹介します。
災害時に逃げ遅れる
2011年3月11日の東日本大震災では、多くの犠牲者が出ました。あれから7年経ちましたが、東北の人にとって、まだまだ傷が癒えたとは言えない状態だと思います。
ところで、当時放送されたテレビ映像を覚えていますか?
視聴者提供の映像の中には、津波がすぐそこまで迫ってきているのに、どこか他人事といった様子で傍観している映像がいくつかありました。
また、津波の様子を見に海まで向かった人、車で移動しようとした人、避難警報がでているのに高台に逃げなかった人もいました。
こうした人たちがどのような結果になったかはみなさんの知るところだと思います。
今でこそ大地震がきた時は「高いところへ避難!」が当たり前ですが、当時の人々にとって、それは当たり前ではありませんでした。
民主党政権の当時、事業仕分けの一環として「スーパー堤防」の予算が削減されたことからもみんなが”想定外”を想定していなかったことがわかります。これも正常性バイアスの働きといえるでしょう。
このように正常性バイアスの働きが強いと、災害など不測の事態が起こった時に、逃げ遅れ、命を落としてしまう危険性があるのです。
正常性バイアスを弱める方法
保育園のルール、仕事の手順、災害時の避難、それぞれに大小の差はありますが、いずれも「守らなければ何らかの危険が生じる」という共通点があります。
そして、この危険について、自分の都合の良いように解釈をすることが正常性バイアスを強めることになっています。
保育園のルールの場合、「今は人通りも少ないし、急いでいるから許される」というのは自分都合の解釈です。人
通りが少ないのはその一瞬で、もしかしたら急に子供が家から飛び出してくるかもしれません。
仕事の手順もそうです。たまたまこれまでミスがなかっただけかもしれません。災害もそう。何が起こるかわからないのが災害なのに、どうしてそれを「大丈夫だろう」と言えるのでしょうか。
正常性バイアスを弱めるためには、まずはこのような自分都合の解釈を捨てる必要があります。では、自分都合の解釈を捨てるためにはどうすればいいのか。
それは、ルールや手順について、常に「なぜ」を考えるようにすることです。
保育園のルールには、「人通りが多いから危険」という説明がありました。では、なぜ人通りが多いと危険なのか。
それは「人通りが多いところを自転車で通ると、ぶつかる可能性が高いから」ですよね。なぜぶつかると良くないのか。それは「ケガをしてしまうから」です。
こうして、ルールや手順を「なぜ」と深堀して考えるクセをつけていけば、正常性バイアスの働きを弱めることができます。「なぜ」がわかれば自分都合の解釈は減っていきます。
- 手順を守らなければいけない →(なぜ?)→ 違う手順だとミスをする確率が高くなる
- 地震が発生したら海に近づいてはいけない →(なぜ?) → 大津波が最短で到達した場合、逃げきれないから
ルールや手順の裏には必ずそのルールや手順が生まれた背景があります。背景はルールや手順の「目的」です。目的を理解していれば、「少しなら大丈夫」「自分だけなら大丈夫」という思考に至ることもないでしょう。
まとめ
僕たちは日ごろの経験から常に先入観や思い込みをもって生活しています。これは冒頭説明したように、脳の機能としてある程度は仕方がないことです。
しかし、世の中が便利になった分、僕たちが直面する危険というのは昔より多くなってきています。そうすると、それらの危険を想像する力が不可欠になってきます。
想像する力は、物事に対し常に「なぜ」を考えることで鍛えられます。なぜやってはいけないのか、なぜやらなきゃいけないのか。これを意識にあげ、考え続けることで、あらゆる危険を回避する助けになるはずです。