2015年、今年のAKB48選抜総選挙も大変に盛り上がった。今や国民的大イベントになったのではないだろうか。
そんな選抜総選挙だが、誰が1位になるのか、ということはもちろん、メンバーによるスピーチも楽しみのひとつである。
このスピーチについては、生中継の番組内でも「誰のスピーチが一番良かったか?」とアンケートを実施するほど、注目度が高いことがよくわかる。
ただ、スピーチの中で「させていただく」という表現が乱発されていたことに若干の違和感を否めない。そこで、この記事では「させていただく」の使い方や、なぜ違和感があるのかを解説している。
「させていただく」は誤り?
今回の総選挙でも「〜させていただく」といった表現がいたるところで聞かれた。
「デビューさせていただいて」
「ライブをさせていただいて」
「させていただく」は丁寧な言い回しにも聞こえるが、多用されるとちょっと耳障な気がする。なぜだろうか。
そもそも「する」の謙譲語が「いたす」というのはみなさんもご存知かと思う。それを考えると
「デビューいたしまして」
「ライブをいたしまして」
とするのが正しいということになる。しかし、これだとなんだか味気ない。というか、ちょっと上から目線のようにも聞こえてしまう。そこで、「いたす」よりさらにへりくだった(ように聞こえる)「させていただく」が使われる。
「させていただく」の意味
そもそも「させていただく」というのはどういう時に使うものなのか。実は、「させていただく」というのは、第三者の許可を得て起こした行動や、恩恵を受けるときに使うものである。
そのため、前後の話の関係により「させていただく」を使うか「いたす」を使うかを判断する必要がでてくる。
例えば、テレビに出演したときのエピソード自体をメインに話すのであれば、誰かの許可を得ているわけではないので、「させていただく」ではなく「いたす」を使う。
そして、テレビ出演自体が誰かのおかげであったり、そのこと自体をメインとした話をしたりする場合は「させていただく」を使う。
つまり、誰かの許可や恩恵を受けて行動していると思うものは「させていただく」を。自分の力で行動している、と思うものには「いたす」を使うようにすればいい。
これが逆だったり、すべて同じだったりするから違和感を覚えるのだ。
ちゃんと使い分けしていますか?
ビジネスの世界でも「させていただく」が多用されている。
会議などのシーンで
という表現をよく耳にする。
これも、初めて会議に出席する新人社員が、上司から命令されて発言するのであれば適切といえる。
しかし、会議の中でも発言力がある人が自らの意思で発言しようとしているのであれば
と言った方がスッキリする。
コールセンターでも「私がご案内させていただきます」と言うオペレーターが多くいるが、案内は基本的に許可や恩恵を受けてするものではない。「私がご案内いたします」と言った方が自然で、スッキリとした印象を与えることができる。
まとめ
「させていただく」を使うことで、なんとなく丁寧な気がする、という気持ちはわからないでもない。しかし、多用しすぎることでかえって耳障りに聞こえたり、逆に失礼な印象を与えたりしてしまう。
どの言葉をどういう時に使うか、どういうシーンで使うのか、といったことを考えて発言することが相手を思いやり、敬うということである。言葉のもつイメージだけで「丁寧に聞こえるから」と安易に使っていいものではない。
日本語は多くの言葉があって難しいが、自分が発した言葉が、本当にその会話に相応しいものか考えてみる、ということもたまには必要なのではないだろうか。