部下に指示を出したのに、思っていたのと違うものが上がってくる。何度注意しても同じミスが続く。こうした悩みを抱えている管理職の方は少なくありません。
部下指導がうまくいかない原因は、部下の能力ややる気だけにあるとは限りません。多くの場合、上司が伝えたつもりの内容と、部下が受け取った内容がずれています。この記事では、延べ500名以上の話し方を指導してきた株式会社あたま代表の木村が、指示・注意・褒め方の場面ごとに、部下に伝わる言い方を紹介します。
部下指導がうまくいかない3つの原因

上司だけがわかる言葉で指示している
たとえば、上司が「ツボを押さえた企画書をまとめて」と指示し、部下が「ツボ?」と思いながらも「わかりました」と答える。提出後に「全然違う。やり直して」となる。こうしたやり取りは珍しくありません。「ツボ」「いい感じに」「しっかり」など、話し手だけが中身をわかっている言葉で指示すると、部下は自分の解釈で作業するしかありません。
周辺の情報だけを伝えて、条件を伝えていない
「大事な会議で使う資料を、A4一枚で作って」と頼まれた部下は、役員の前でプレゼンする資料だと考えて作り込みます。ところが実際には、課長が説明するときの手元メモで、誰にも見せない資料だった。このように、「大事な会議」という周辺情報だけを伝えると、部下は足りない条件を推測で埋めてしまいます。
経験で判断していることを言葉にしていない
熟練した上司ほど「見ればわかるだろう」と考えがちです。しかし経験の浅い部下には、上司が無意識に見ているポイントや判断の基準が見えていません。
指示を出すときのコツ
依頼の4つの条件を伝える
資料や作業を頼むときは、次の4つを伝えます。
- 誰が使うのか
- 誰に見せるのか
- 何のために使うのか
- どこまでの完成度が必要か
完成の状態を具体的に書き出す
作業を頼む前に、何ができていれば完了なのかを上司自身が書き出します。たとえば「報告書を印刷して会議室に並べておいて」だけでは、部数、向き、両面か片面か、カラーか白黒、穴あけ、ホチキスの位置など、結果を左右する条件が抜けてしまいます。「10部、横向き、両面印刷、カラー、2穴、ホチキス2か所」のように、完成の状態を言葉にして伝えましょう。
指示は「何をしてほしいか」から伝える
業務上の会話では、相手にとってほしい行動を最初に伝え、そのあとに理由を伝えます。何のための説明なのかがわかると、部下は話を受け取りやすくなります。
注意するときのコツ
人格ではなく、行動と今回の仕事に限定する
注意するときは、相手の人格に否定的な言葉を付けず、問題があった行動や今回の仕事に範囲を限定して伝えます。
- 「あなたは本当にだらしない」→「この書類の書き方だと、だらしなく見られてしまう」
- 「あなたは詰めが甘い」→「今回の仕事は、詰めが甘かった」
人格を繰り返し否定されると、本人がその人物像を自分の一部として受け入れ、同じ行動を取りやすくなります。行動に限定したうえで、どう直せばよいかも具体的に伝えましょう。
褒めるときのコツ

続けてほしい行動を先に伝える
褒めるときも、今後続けてほしい行動を先に伝えます。
例:今日のような会議を、これからも続けてほしい。なぜなら、全員が自分の意見を出せていて、すごく良かったから。
「あなたはすごい」より「私は助かった」と伝える
「あなたはすごい」と人物を評価する言い方は、上から採点しているように聞こえることがあります。「あなたが早めに共有してくれたので、私はとても助かった」のように、その行動によって自分に起きたことを伝えると、対等な関係で行動の影響を共有できます。
部下が自分で考えるようになる関わり方
部下に事実の報告だけをさせず、「あなたの意見は」「どうしたらいいと思う」と、自分の判断や提案を考えて持ってくる習慣をつけます。部下が自分で判断できるようになると、上司が細かく確認し続ける必要が減り、仕事を任せられるようになります。最初のうちは、判断の基準と、どんなときに相談すべきかを示しておきましょう。
部下への伝え方に悩む管理職の方へ
ここで紹介した方法は、どれも管理職や経営者の方へのレッスンで実際に使っているものです。頭では理解できても、自分の口ぐせや、無意識に使っている曖昧な言葉には、一人ではなかなか気づけません。
株式会社あたまでは、経営者・管理職の方を対象に、マンツーマンの話し方レッスンを行っています。部下に伝えたい内容を対話で一緒に整理し、相手に伝わる順番と言葉に組み立て直したうえで、実際の指示や面談の場面を想定して練習します。レッスンはオンラインで受講でき、60分の無料体験レッスンも実施しています。
仕事の教え方そのものを見直したい方は「仕事の教え方がわからない人のための4ステップ」、会議での話し方は「会議で話がまとまらない原因と対策」もあわせてご覧ください。
まとめ
部下指導がうまくいかない原因の多くは、上司だけがわかる言葉や、足りない条件のまま指示を出していることにあります。指示では依頼の4つの条件と完成の状態を伝え、注意は行動と今回の仕事に限定し、褒めるときは続けてほしい行動を先に伝える。まずは次に部下へ仕事を頼むとき、「誰が使い、誰に見せ、何のために、どこまで必要か」を伝えるところから試してみてください。

