部下に指示を出したのに、思っていたのと違うものが上がってくる。何度説明しても同じミスが続く。こうした悩みを抱えている管理職の方は少なくありません。

部下指導がうまくいかない原因は、部下の能力ややる気だけにあるとは限りません。多くの場合、上司が伝えたつもりの内容と、部下が受け取った内容がずれています。

この記事では、延べ500名以上の話し方を指導してきた株式会社あたま代表の木村が、部下指導がうまくいかない原因と、部下に伝わる指導のコツを具体例つきで紹介します。

部下指導がうまくいかない3つの原因

上司と部下で見えているものが違う

上司と部下では、持っている情報や経験、責任の範囲が違います。上司にとっては当たり前の前提が、部下には見えていないことがよくあります。たとえば「いつもの形式で資料をまとめておいて」という指示は、上司の頭の中では形式も締め切りも決まっていますが、部下はどの資料を参考にすればよいのかわからないまま作業を始めてしまいます。

このように、同じ言葉を聞いても、立場によって思い浮かべるものが違うことを「目線のズレ」と呼んでいます。やっかいなのは、上司も部下も「相手も同じものを見ている」と思い込んでいる点です。

指示の目的が伝わっていない

「この数字を集計しておいて」とだけ伝えると、部下は集計作業そのものをゴールにします。その数字を何に使うのかがわからないため、必要な切り口で分けていなかったり、細かすぎる資料を作ってしまったりします。作業の内容だけを伝え、目的を伝えていないと、部下は自分で判断できません。

伝える前に上司自身の考えが整理されていない

上司自身の中で「何をしてほしいのか」「どこまでできていれば合格なのか」が決まっていないまま指示を出すと、説明があいまいになります。その結果、部下の成果物を見てから「そうじゃない」と言うことになり、部下は何が正解だったのかわからなくなります。

部下に伝わる指導の5つのコツ

1. 指示の前に目的と完成形を伝える

指示を出すときは、作業の内容より先に「何のためにやるのか」と「どういう状態になれば完成か」を伝えます。

伝わりにくい例
来週の会議用に、先月の売上データをまとめておいて。

伝わりやすい例
来週の会議で、どの商品の販促に予算をかけるかを決めたい。判断できるように、先月の売上を商品別に前年と比べた表を1枚にまとめてほしい。水曜の15時までにお願いします。

目的と完成形がわかれば、部下は途中で迷ったときに自分で判断できるようになります。

2. 部下が知っている前提を確認する

説明を始める前に「この案件の経緯は聞いている?」「前回の資料は見たことがある?」と、部下が持っている情報を確認します。上司が知っていることを部下も知っているとは限りません。前提をそろえてから説明するだけで、伝わり方は大きく変わります。

3. 1回の指示で伝えることを1つに絞る

一度に複数の指示を出すと、部下はどれを優先すればよいのかわからなくなります。指示が複数あるときは「お願いが3つあります」と最初に数を伝え、優先順位をつけて1つずつ説明しましょう。

4. 部下の言葉で復唱してもらう

「わかりました」という返事は、本当に理解できたことを意味しません。説明のあとに「どう進めるつもりか、一度説明してもらえる?」と聞き、部下の言葉で話してもらいます。ずれていれば、その場で修正できます。

5. 結果より行動を具体的にフィードバックする

「もっとしっかりやって」「いい感じだったよ」といった抽象的なフィードバックでは、部下は次に何を変えればよいのかわかりません。「冒頭で結論を言えていたのがよかった」「数字の根拠を1行添えると判断しやすくなる」のように、行動を具体的に伝えましょう。

部下指導で避けたい伝え方

  • 人格を否定する:「だからダメなんだ」など、行動ではなく人そのものを否定する言い方は、部下の萎縮や反発を招きます
  • 感情的に伝える:怒りのまま話すと、部下は内容より上司の感情に意識が向き、肝心の指摘が残りません
  • 「察して」と期待する:「言わなくてもわかるだろう」という前提は、目線のズレをそのまま放置することになります

指導の場面では、伝え方ひとつで部下との信頼関係が大きく変わります。厳しい内容を伝えるときほど、事実と行動に絞って話すことを意識してください。

部下への伝え方に悩む管理職の方へ

ここで紹介したコツは、頭では理解できても、実際の場面で使いこなすのは簡単ではありません。特に「何をしてほしいのか」を自分の中で整理する作業は、一人では行き詰まりやすい部分です。

株式会社あたまでは、経営者・管理職の方を対象に、マンツーマンの話し方レッスンを行っています。部下に伝えたい内容を対話で一緒に整理し、相手に伝わる順番と言葉に組み立て直したうえで、実際の指示や面談の場面を想定して練習します。レッスンはオンラインで受講でき、60分の無料体験レッスンも実施しています。

仕事の教え方そのものを見直したい方は、仕事の教え方がわからない人のための4ステップもあわせてご覧ください。

まとめ

部下指導がうまくいかない原因の多くは、上司と部下で見えているものが違うことにあります。指示の前に目的と完成形を伝え、部下の前提を確認し、部下の言葉で復唱してもらうだけでも、伝わり方は変わります。

まずは次に部下へ指示を出すとき、「何のために」「どうなれば完成か」を一言添えるところから試してみてください。