社長は、年頭挨拶や創立記念式典、入社式など、社員や取引先の前で話す機会が多くあります。社長の挨拶は会社の考え方を伝える場でもあるため、何をどう話すかで、社員や取引先からの見られ方が変わります。
この記事では、経営者のスピーチ原稿づくりと話し方の指導を行っている株式会社あたま代表の木村が、社長の挨拶・スピーチの準備の仕方と、場面別の例文を紹介します。
原稿を書く前に決める3つのこと
挨拶の原稿を書き始める前に、次の3つを一文ずつ書きます。
- 誰に話すか
- 何を一番伝えるか
- 聞いた後に、相手にどう考え、どう行動してほしいか
この3つが決まっていないまま書き始めると、情報は多いのに何のための話かわからない挨拶になります。聞き手は役職や年齢だけでなく、どんな気持ちでその場にいるのかまで考えて決めましょう。
原稿は見出しから作る
本文をいきなり書かず、先に「挨拶」「感謝」「実例」「結び」など4つ前後の大きな見出しを作り、各見出しの下に入れる内容を並べます。見出しがあると、各部分に入れる内容の範囲が決まり、話がそれるのを防げます。
2〜3分の挨拶なら、起承転結の4段構成が使えます。起は聞き手を引き込む部分、承は本題へのつなぎ、転はエピソード、結はまとめです。
冒頭で避けたいこと
冒頭を、長い自己紹介や決まり文句の挨拶だけで使わないようにします。聞き手はほかの場でも同じような挨拶を聞いているため、関心が生まれにくくなります。
就任挨拶でよくあるのが「自己紹介も兼ねて」という前置きです。話し手の都合で経歴を話し始めると、自慢や脱線に聞こえることがあります。たとえば次のように直します。
直す前:本日は自己紹介も兼ねて、少しお話しさせていただきます。
直した後:今日は来年度の方針についてお話しするように言われています。ですがその前に、私がこの会社と皆さんをどう見ているかをお話しさせてください。
こうすると、その後に話す自分の経験が、本題を支える材料として聞こえるようになります。
方針は数を限定した「約束」で示す
長い経営方針をそのまま話しても、聞き手は覚えられません。「今日は三つの約束をお伝えします」のように数を先に示し、それぞれを短い一文で言い切ります。そのうえで、各約束の意味や具体例を説明します。
結びは、自分が何をするかで締める
社員を褒めて終わる挨拶では、社長がその強みをどう生かすのかが伝わりません。結びでは、会社や社員の強みについての評価を、自分自身の行動につなげます。
例:この会社の一番の強みは、ここにいる皆さんです。この皆さんのことを、もっと多くのお客様に知っていただきたい。そのために、私自身がもっと外に出て、この会社の価値を伝えていきます。
言葉の選び方の注意点
- すでに実行したことは「考えております」ではなく「いたしました」と言い切ります。検討中のことと実行済みのことを区別すると、聞き手が会社の現状を誤解しません。
- 「発展」「改善」などの抽象的な言葉だけで終わらせず、実際に見た場面や、相手が話した言葉を使います。
場面別の例文

年頭挨拶の例文
皆さん、新年あけましておめでとうございます。昨年は一人ひとりの頑張りのおかげで、大きな目標を達成することができました。ありがとうございます。
今年、私から皆さんに三つの約束をお伝えします。一つ目は、お客様の声を毎月全社で共有する場をつくること。二つ目は、現場で決められることは現場で決められる仕組みにすること。三つ目は、私自身が月に一度、各部署の話を直接聞きに行くことです。
昨年、あるお客様から「担当者が変わって説明がわかりやすくなった」という言葉をいただきました。私はこの言葉を聞いて、この会社の強みは一人ひとりのお客様への向き合い方にあると改めて感じました。今年も一年、よろしくお願いいたします。
創立記念式典の例文
本日は、創立〇周年の記念式典にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
〇年前、私たちは数名で事業を始めました。仕事の依頼がない月もありましたが、最初に仕事を任せてくださったお客様の「やってみなさい」という一言に支えられて、ここまで来ることができました。
これからも、目の前のお客様の期待に一つずつ応えていきます。そのために私自身が先頭に立って、お客様の声を聞きに行きます。今後とも変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。
入社式の例文
新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。皆さんを仲間として迎えられることを、社員一同うれしく思っています。
皆さんにお願いしたいことは一つです。わからないことは、遠慮せずに聞いてください。私も入社したばかりのころ、質問するのが恥ずかしくて一人で抱え込み、大きな失敗をしたことがあります。聞くことは、仕事を早く覚えるための一番の近道です。
先輩たちも皆さんの質問を待っています。私も皆さんの声を聞く時間をつくります。一緒に良い会社をつくっていきましょう。
本番に向けた練習のしかた
原稿を全文暗記すると、一文を忘れたときにその先も出てこなくなります。話す順番と、各部分の結論・理由・事実という骨組みだけを覚え、自分の言葉で話す練習をしましょう。正確な数字や固有名詞はメモで確認します。
いきなり大事な式典で試すのが不安な方は、朝礼のような影響の小さい場で、順番だけを決めて話す練習から始めるのがおすすめです。
社長の挨拶やスピーチに悩む方へ
伝えたいことが多すぎてまとまらない、自分の言葉で話したいのに決まり文句になってしまう。こうした悩みは、話す内容を誰かと一緒に整理すると解決しやすくなります。
株式会社あたまでは、社長・役員・管理職の方の挨拶やスピーチの準備をマンツーマンでお手伝いしています。伝えたい想いを対話で一緒に整理し、聞き手に届く順番と言葉に組み立てたうえで、本番を想定した練習まで行います。60分の無料体験レッスンも実施しています。
就任挨拶については「就任挨拶のスピーチ方法と例文5選」でも解説しています。
まとめ
社長の挨拶は、原稿を書く前に「誰に」「何を」「どうなってほしいか」を決め、冒頭で前置きを長くせず、方針は数を限定した約束で示し、結びは自分の行動で締めると、聞き手に届きやすくなります。

