会社の方針を何度説明しても、社員の動きが変わらない。ビジョンを語っても反応が薄い。社員がついてこないと感じたとき、多くの社長は「社員の意識が低い」と考えがちです。
ただ、経営者の方のスピーチや社内メッセージづくりをお手伝いしていると、社長の想いが社員に届く形になっていないケースによく出会います。この記事では、経営者・管理職の話し方を指導してきた株式会社あたま代表の木村が、社長の想いが社員に伝わらない原因と、伝え方の見直し方を紹介します。
社長の想いが社員に伝わらない3つの原因
社員が抱えている不満に触れていない
社長が理想の会社像を語っても、社員が日々感じている不満や不安に触れていなければ、社員は自分に関係する話として受け取れません。ある会社では、若手社員から「上が決めてくれない」「会議ばかり」という声が出ていました。この声に答えないまま理念を語っても、社員には届きません。
結論だけを伝えて、判断の過程を伝えていない
社長は多くの事実を見て、考えたうえで方針を決めています。しかし社員に伝わるのは、完成した方針だけです。どの事実を見て、何を問い、どの基準で判断したのかがわからないと、社員は方針に納得できず、同じ状況で自分で判断することもできません。
抽象的な言葉のまま止まっている
「誇りを持て」「経営者目線を持て」といった言葉は、社長にとっては経験に裏打ちされた言葉です。しかし社員には、自分の仕事のどこを変えればよいのかがわかりません。
想いを社員に伝えるための5つの見直し方

1. 話す前に「誰に」「何を」「どうなってほしいか」を一文ずつ書く
スピーチや社内メッセージを作る前に、次の3つを一文ずつ書きます。
- 誰に話すか:例「中期経営計画に初めて参加し、半分はまだ自分の問題として捉えていない社員」
- 何を一番伝えるか:例「入社して良かったと思える会社を、皆で作っていきたい」
- 聞いた後にどうなってほしいか:例「参加して良かったと思い、次の会議にも前向きに参加する」
聞き手を「全社員」とひとまとめにすると、誰のどんな認識を変えたいのかがぼやけます。一番届けたい相手を具体的に決めましょう。
2. 社員の不満や不安から話を組み立てる
話す内容を決める前に、社員が実際に口にしている不満、不安、わだかまりを確認します。そのうえで、その声にどう答えるのかを話の中心に置きます。ただし、一部の声を全社員の考えとして扱わないよう注意します。
3. 判断の過程を共有する
方針を伝えるときは、結論だけでなく、どの事実を見て、何を問い、どの基準で判断したのかもあわせて伝えます。判断の過程がわかると、社員は方針に納得しやすくなり、似た場面で自分で考えられるようになります。
4. 抽象的な言葉を、社員の生活の中の言葉に置き換える
「社員が会社に誇りを持てていない」という問題を伝えるとき、抽象的な言葉だけでは聞き手は実感できません。ある経営者の方は、社員の家族が口にした一言を、会社を変えたい理由として話しました。数字や評価語より、実際に誰かが口にした言葉のほうが、聞き手は自分のこととして受け取れます。ただし、本人や家族を責める使い方にせず、個人が特定されないよう配慮します。
管理職に全社的な視点を求めるときも、「経営者目線を持て」で終わらせず、今どこだけを見ているのか、上の役職が担っている仕事は何か、どこまで役割を広げてほしいのかを具体的に伝えます。
5. 一つの価値観を、場面を変えて繰り返し伝える
価値観を定着させたいときは、中心の意味は変えずに、毎回違う職場の場面や判断例を使って伝えます。同じ文言を繰り返すだけでは読み飛ばされ、毎回テーマを変えると覚えてもらえません。上司と部下、部署間、顧客対応など、角度を変えて伝え続けることで、社員の中に定着していきます。
社員に自分で考えてもらう場をつくる

方針を具体的な行動に変えたいときは、社長が完成した行動規範を配るより、社員自身が「自分の仕事ではどういう意味か」「どんな行動をとるか」を考えて持ち寄る会議が役に立ちます。自分で考える過程があるほうが、方針を深く理解し、業務に合った言葉を作れます。その際は、最終的に誰が決めるのか、採用されなかった意見にどう説明するのかを先に示しておきます。
社長の伝え方を見直したい方へ
社長の想いは、本人の頭の中では明確でも、言葉にすると抽象的になりがちです。社員の声を踏まえて自分の考えを言葉にする作業は、一人では客観的に見直しにくい部分です。
株式会社あたまでは、経営者の方のスピーチ原稿づくりや、社内メッセージの準備をマンツーマンでお手伝いしています。社員に伝えたい想いを対話で一緒に整理し、社員に届く順番と言葉に組み立てたうえで、朝礼や会議、スピーチの場面を想定して練習します。レッスンはオンラインで受講でき、60分の無料体験レッスンも実施しています。
会議での話し方については「会議で話がまとまらない原因と対策」でも解説しています。
まとめ
社員がついてこない原因の多くは、社長の想いが社員の抱えている問題とつながっていないことにあります。話す前に「誰に」「何を」「どうなってほしいか」を書き、社員の声から話を組み立て、判断の過程まで伝えることで、想いは届きやすくなります。

