配属から3か月がたち、新入社員フォローアップ研修を任されたものの、去年は新人研修の復習と近況報告で終わってしまった、新人に困っていることを聞いても「大丈夫です」としか返ってこない、研修のアンケートは良かったのに職場では何も変わらなかった、など、フォローアップ研修の中身に頭を悩ませていないでしょうか。

新入社員フォローアップ研修で扱うのは、配属後に新人が実際に困った出来事です。その出来事を材料にして、新人が自分の悩みを事実と解釈に分けて整理し、上司や先輩に相談できる形にするところまで練習すると、研修のあとに職場での話し方が変わります。

この記事では、フォローアップ研修の目的の決め方、半日のプログラム例、当日に行う2つのワーク(悩みの整理と報連相)の会話例、研修で決めたことを職場で続ける方法をご紹介します。

新入社員フォローアップ研修の目的は、新人の「困った」を相談できる形にすること

新入社員フォローアップ研修は、配属から3か月〜半年ほどたったころに、同じ時期に入社した社員を集めて行う研修です。この時期の新人は、仕事の流れが少し分かってきた一方で、職場の人間関係や仕事の進め方について、新人研修では習わなかった困りごとを抱えています。

ところが、その困りごとは上司や人事になかなか届きません。なぜなら、新人自身が何に困っているのかを言葉にできていないうえに、「こんなことで相談していいのか」と迷っているからです。面談で「何か困っていることはある?」と聞かれた新人が「大丈夫です」と答えるのは、そのためです。

株式会社あたまでは、職場のすれ違いを「目線ズレ」と呼び、視点(見ているもの)・視野(見えている広さ)・視座(見ている高さ)・視角(見ている角度)の4つに分けて考えています。配属後の新人と上司の間で起きやすいのは、視座のズレです。上司から見れば数秒で済む確認でも、新人から見ると「忙しそうな先輩の手を止めてまで聞くこと」になり、聞かないまま一人で抱えてしまいます。

目線ズレの4つの種類:視点(見ているもの)、視野(見えている広さ)、視座(見ている高さ)、視角(見ている角度)

そのため、フォローアップ研修の目的は、新人が自分の困りごとを整理し、職場の誰かに相談できるようになることに置きます。新人研修の復習は、その目的に必要な部分だけで足ります。

研修の前に、上司と人事で決めておく2つのこと

フォローアップ研修のプログラムを考える前に、次の2つを決めておきます。ここが決まっていないと、当日に何を扱うかを選ぶ基準がありません。

研修のあと、新人に何ができていてほしいかを一文で書く

研修の目的は、「研修のあと、新人が職場で何をしていればよいか」が分かる一文で書きます。たとえば「困ったことがあったら、その日のうちに、起きたことと自分の考えを分けて上司に相談できる」のように、行動で書きます。「社会人としての自覚を高める」「モチベーションを上げる」という書き方では、研修が終わったあとに、できたかどうかを確かめられません。

配属先の上司と新人から、困っていることを聞いておく

次に、配属先の上司には「新人がこの3か月で困っていそうなこと」を、新人には「配属されてから困った出来事」を、それぞれ1つずつ事前に書いてもらいます。新人には、上手に書く必要はないこと、書いた内容で評価をしないことを先に伝えます。

上司の答えと新人の答えを並べると、見えているものの違いがはっきりします。たとえば上司は「報告が遅い」と書き、新人は「いつ話しかけていいか分からない」と書く、といった違いです。研修では、この違いを題材にします。

新入社員フォローアップ研修の内容例(半日プログラム)

半日(休憩を含めて約3時間半)で行う場合のプログラム例です。講義は短くして、時間の多くを、新人が自分の出来事を使って考えるワークに使います。

新入社員フォローアップ研修の半日プログラムの例:1 配属後の出来事を書き出す(30分)、2 悩みを事実・解釈・感情に分ける(60分)、3 報連相のロールプレイ(60分)、4 次の1か月で試すことを決める(30分)
  • 配属後の出来事を書き出す(30分):この3か月でうまくいったこと、困ったことを、それぞれ具体的な場面で書き出します。
  • 悩みを事実・解釈・感情に分ける(60分):困ったことを1つ選び、何が起きたか、自分はどう受け取ったか、どう感じたかを分けます。
  • 報連相のロールプレイ(60分):整理した悩みを、上司への相談として話す練習をします。
  • 次の1か月で試すことを決める(30分):研修で練習したことを、職場のどの場面で試すかを決めます。

新人研修でビジネスマナーや電話対応を学んでいても、フォローアップ研修でその復習に長い時間を使う必要はありません。配属後にできていないことが分かっている項目だけを、ワークの中で扱えば足ります。新人研修全体の組み立て方は「新人研修のカリキュラム作成方法と気をつけるべき5つのポイント」でご紹介しています。

ワーク1:新人の悩みを「事実・解釈・感情」に分ける

フォローアップ研修の中心になるのが、このワークです。新人が書いてくる悩みには、実際に起きたことと、本人の受け取り方と、そのときの気持ちが混ざっています。そこで、次の3つに分けて書き直してもらいます。

  • 事実:誰が見ても確かめられる、実際に起きたこと
  • 解釈:その出来事を、自分がどう受け取ったか
  • 感情:そのとき、どう感じたか

たとえば、新人が「先輩に嫌われている気がする」と書いてきたとします。講師は、質問しながら次のように分けていきます。

講師「嫌われている気がしたのは、どんなことがあったときですか」
新人「午前中に質問しに行ったら、『あとにして』と言われました。2回です」
講師「先輩は、ほかに何か言っていましたか」
新人「いえ、それだけです。パソコンの画面を見たまま言われました」
講師「そのとき、どう感じましたか」
新人「迷惑なんだと思って、質問するのが怖くなりました」

「先輩に嫌われている気がする」という悩みを、事実(質問したら2回「あとにして」と言われた)、解釈(嫌われているのかもしれない)、感情(不安)、確かめること(質問してよい時間はいつか)に分けた例

分けてみると、確かめられた事実は「午前中に質問したら、2回『あとにして』と言われた」ことだけで、「嫌われている」は新人の解釈だと分かります。そうなると、次にやることも変わります。先輩の気持ちを想像して悩み続けるより、「先輩に質問してよい時間はいつか」を確かめればよいのです。

株式会社あたまの研修では、このワークの前に、「取引先の部長がお茶のことで怒っていたらしい」という報告だけを聞いて、上司としてどう対応するかを決めてもらうことがあります。聞いた人によって対応が大きく分かれるので、事実と解釈が混ざった話を聞くと、聞いた側も判断を誤ることを、新人自身が体験できます。

なお、ワークの中で、眠れない、体調が悪い、会社を辞めたいといった話が出ることがあります。その場合は研修の場で解決しようとせず、本人の了解を得て人事に伝え、会社の決まった手順で産業医などの専門の窓口につなぎます。

ワーク2:報連相は「何の話か→起きたこと→してほしいこと」の順で練習する

悩みを整理できたら、次はそれを上司に伝える練習です。新人の報告や相談でよく起きるのは、起きたことを順番に全部話して、上司に何をしてほしいのかが最後まで出てこないことです。

悪い例:「午前中に先輩に質問しに行ったんですけど、あとにしてと言われて、午後にもう一回行ったんですけど、またあとにしてと言われて、それで……」
良い例:「先輩への質問の仕方について相談させてください。今日、先輩に2回質問しに行ったところ、2回とも『あとにして』と言われました。先輩の忙しい時間を避けたいので、質問してよい時間を決めていただけないでしょうか」

良い例では、最初に何の話かを言い、次に起きた事実を言い、最後に上司にしてほしいことを言っています。そのため上司は、話を聞き終わる前に、自分が何を判断すればよいかが分かります。

また、仕事の報告は、次の3つのどれかで終えるように練習します。

  • 「〇〇しました」(すでに対応したことを伝える)
  • 「〇〇します」(これからすることを伝える)
  • 「〇〇したいのですが、よろしいでしょうか」(判断してほしいことを伝える)

まだ自分で案を出せないときは、「ここまでは分かっていますが、この点だけ確認させてください」と、分かっていないところを具体的に伝えれば十分です。

ロールプレイのあとは「良かった点3つ、直す点1つ」を返す

ロールプレイは、新人同士で上司役と新人役に分かれて行います。終わったら、上司役が「良かった点を3つ、直す点を1つ」伝えます。直す点を1つに絞るのは、一度にいくつも指摘されると、新人は何から直せばよいのかが分からなくなるからです。

新人の報連相がうまくいかない、配属後の新人が何に困っているのか分からない、といったお悩みは、研修でもお手伝いしています。新人フォローアップ研修では、入社後の振り返り、報連相、事実と解釈を分けた課題の整理を、新人の実際の出来事を使って行います。新人フォローアップ研修のご案内はこちら

研修で決めたことを、職場で1か月続ける

研修の最後に、新人一人ひとりが「次の1か月で、どの場面で何を試すか」を決めます。たとえば「来週の月曜の朝、先輩に質問してよい時間を聞く」「報告は、何の話か、起きたこと、してほしいことの順で話す」のように、場面と行動を決めます。

そして試したあとは、次の3つの質問で振り返ってもらいます。

  • その場面の前に、やろうと決めたことを思い出せたか
  • やってみて、相手の反応はどうだったか
  • 次も同じようにできそうか

この振り返りは、研修の講師だけでなく、配属先の上司にも共有します。研修で何を練習したのかを上司が知らないと、新人が職場で試したときに、それを受け止める人がいないからです。

相談できる相手を、上司以外にも用意する

一方で、上司には相談しにくいと感じる新人もいます。株式会社あたま代表の木村は、コールセンターで新人教育を担当していたとき、責任者とは別の人による2〜3週間に1回の面談、1年先輩のメンター、毎朝・毎夕の「昨日のあと、大丈夫だった?」「今日はどうだった?」という短い声かけを組み合わせて、新人が相談できる相手を増やしていました。研修期間中の離職率が約35%だった現場で、こうした取り組みを続け、その後3期続けて離職者0人になりました。

OJTの進め方や、メンター・面談の役割分担は「OJT研修の進め方|トレーナーが使う5つの手順と会話例」で詳しくご紹介しています。

まとめ

新入社員フォローアップ研修のポイントを、3つにまとめます。

  • 研修の目的は、新人が自分の困りごとを整理し、職場で相談できるようになることに置く
  • 当日は配属後の実際の出来事を使い、悩みを事実・解釈・感情に分け、報連相の形で話す練習をする
  • 研修で決めたことを職場で1か月試し、上司と一緒に振り返る

明日、配属先の上司に「新人がこの3か月で一番困っていそうなこと」を1つ聞いてみてください。そして、同じことを新人にも聞いてみてください。2人の答えが違えば、そこがフォローアップ研修で最初に扱うテーマです。

新入社員フォローアップ研修のご相談

株式会社あたまでは、入社後の新人を対象に、新人フォローアップ研修を行っています。この記事でご紹介した、配属後の出来事の振り返り、悩みを事実と解釈に分ける整理、報連相のロールプレイを、新人の実際の出来事を使って行います。内容は、業務内容と新人の状況をうかがってから組み立てます。研修後3か月のフォロー(無料)があり、研修後の課題提出も受け付けています。

社内でフォローアップ研修を検討している人事・研修担当の方には、研修テーマと料金をまとめた資料(PDF・5ページ)をご用意しています。研修資料をダウンロードする ご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。